デフレ不況論の間違い。

現在の日本の不況を、デフレ不況(デフレスパイラル)と呼ぶ人が多いようです。
多くの人たちが、デフレ(平均物価の下落)が不況を起こしていると考えています。
テレビ局などで紹介されている理屈は。
デフレによって企業利益が減り、給与が減る、給与が減ることによって消費が減り、さらにデフレが起る。

これは大きな間違いで、デフレそのものが不況を起こすことはありません。

先ず平均物価が10%下がったとします。(10%のデフレ)
それまで500万円の年収で買えていたものが、450万円で買えるようになります。
企業の業績が下がり、年収が減るまでの間、人々は50万円分それまで消費できなかった分野へ支出できるようになります。(実質所得の増加、好況要因)
この好影響を全く無視したとしても、企業業績が年収に転換され、所得が直ちに450万に下がったとしても、それによって買えるものはデフレ前と同じ、つまり全く不況要因にはなっていません。

実質所得(生活水準)とは、物価に対する所得の大きさですから、デフレそのものは好況要因です。

逆に、平均物価が10%上がったとします。(10%のインフレ)
それまで500万で買えていたものが、550万円出さないと買えません。
所得は直ぐに上がることはありませんから、企業業績が上がり、年収が550万円になるまでの間、消費水準を減らさなくてはならなくなります。(実質所得の減少、不況要因)
それだけでなく、消費水準そのものが下がりますから、企業の売り上げは維持できず、10%増を達成することは事実上できませんから、年収が550万円になることはありません。
インフレ(平均物価の上昇)は、不況要因です。

好況の時はインフレになり、不況のときはデフレになることは誰でも知っていますが、世間でこのようにインフレの意味が誤解されてしまう理由は、そのメカニズムに原因があります。

不況期には所得が停滞するか若しくは所得が下がります。
所得の低下は購買力を下げますから、商品は売れなくなり、企業は少しでも売り上げを確保する為に物価を下げることになります。
少しでも多く売り上げを確保しようとする反応が結果的に経済の衰退速度を和らげることになります。

好況期には所得が上がります。
所得の上昇は購買力を増しますから企業はより多くの売り上げを確保する為に、物価を上げようとします。
より多くの売り上げを確保することによって、企業は利益を増し、給与は増え、設備投資が促され、更なる再生産が生まれます。

これらは市場の極めて正常な反応です。

つまり、好況はインフレを生むが、インフレが好況を生むことはなく、不況はデフレを生むが、デフレが不況を生むことは無い。

好況とは、事実上、購買力の上昇のことであり、不況とは事実上、購買力の減少のことであるといえます。

取引に混乱をもたらすような過度の平均物価(通貨価値)の変動や、政府や外部から直接もたらされたものはインフレ、デフレ共に経済に悪影響をもたらしますが、正常な市場の反応として起る、好況時のインフレ、不況時のデフレは、経済にとって有益です。

よく市場の失敗は話題になり、政治の成功も話題になります。
市場は失敗が話題になるほどに失敗が少なく、政治は成功が話題になるほどに失敗が多いとは、皮肉なものです。