大麻まちづくりフォーラム〜世界平和の里へ〜

同時開催−大麻フェステイバル(麻の物産展)

〜約350名を集め大麻町の原点に回帰する大麻文化の復興に向けた動きが始まる〜

□引き続いて記念講演として鳴門市立鳴門工業高校の林博章氏より、「大麻町のメッセージを世界に発信」と題して、約50分の講演がなされ、立見客がでるほどの熱気となった。その内容は、この大麻町は、阿波忌部族が麻を植えたことにちなむ大麻山の麓に位置する大麻町は、倭国創生の立役者となった忌部族の拠点地である。しかもその大麻は、弥生後期の激動の東アジア情勢と気候変動が続く中、倭国の人々に豊穣と平和・幸福をもたらした聖なる大麻であった。その忌部族の日本各地の進出は、忌部族の平和的外交による技術・思想供与にあり、彼ら忌部族の思想が基盤となり、後のお接待の思想、板東俘虜収容所における平和的文化交流、賀川豊彦を形成するバックボーンとなったのではないか。その大麻町の原点である麻文化を今こそ日本文化の縦糸として復興し、かつ大麻町がもつ高い平和思想を世界に発信すべきだと講演した。続いて、栃木県鹿沼市の日本一の麻農家となる大森由久氏より、「鳴門市へのメッセージ」と題して約10分間の講演があった。その大森氏の紹介にあたっては、NHKの昼のプレゼントで放映された大森家のビデオが映し出され、大麻町商工会宛に届いた栃木県知事からのメッセージ文が読み上げられた。その文は、次のような感動的なものであり、今後の徳島県と栃木県とが基軸となり麻文化の復興が開始されることを予見させる文面であった。

<本日、「大麻町商工会50周年記念事業」がこのように盛大に催されますことを心からお祝い申し上げます。またこの度は、本県を代表して大森由久氏をお招きいただきまして、誠にありがとうございます。大森氏は、長年にわたり本県の麻生産における第一人者として活躍しておられるとともに、農村活性化アドバイザーとして地域社会の発展に御尽力されるなど、本県農業の振興に大きく貢献されています。特に麻づくりにおいては、強くて丈夫な麻の特性を最大限に引き出した栽培を行い、神社の注連縄や太鼓の調べ緒といった麻ならではの需要を担う一方で、後継者とともに麻紙を使った工芸品の制作を行うなど、麻の需要拡大に向けた新用途を開発し、栃木県の野州麻のブランド化を道を切拓いてこられました。ここにあらためて敬意を表します。かつては全国各地で栽培された麻も、現在では栃木県が唯一の産地となっているのが現状であり、私としても、日本人の生活文化に根ざした麻の生産を維持し、先人が築いた麻の文化を後世へ引き継いでいく必要性を感じています。麻は、34世紀に徳島県鳴門市大麻町を起点とする「阿波忌部族」が全国に伝播したとされており、神聖な植物として日本人の生活に深く関わってきました。このたび、麻の原点地ともいうべき大麻町で開催される「大麻まちづくりフォーラム」において、大森氏が「日本一の麻農家」として招聘されたことは、栃木県の誇りであり、大変嬉しく思います。本フォーラムを契機として、大森氏の今後のなお一層のご活躍を御期待申し上げるとともに、麻の文化を通した民間交流によって、徳島県と栃木県の親交が深まることを切に願っています。平成221030日 栃木県知事 福田富一>

□その大森氏のメーセッジの中身は、徳島県が日本の麻文化の発祥地となる位置付けになること、その麻文化の原点地に麻文化が絶えている現状を嘆き、今こそ徳島県に麻文化を自分自身の手に取り戻す動きを強めてほしいこと、もし、麻栽培の免許許可が降りたならば、大森氏自身が大麻町の麻栽培のために尽力することを誓い感動的なスピーチを終えた。

日時 平成22年10月30日(土)13:00〜17:00
場所 鳴門市大麻町 「鳴門市ドイツ館」

1030日(土)、阿波忌部族が大麻を植え拠点地とした鳴門市大麻町の鳴門市ドイツ館で、大麻町商工会50周年記念事業として大麻町まちづくりフォーラム〜世界平和の里へ〜同時開催・大麻フェスティバルが徳島県のみならず、全国各地14都道府県から約350名の参加者を集め盛大に開催された。その地域名を出せば、関東では栃木・埼玉・茨城・神奈川・千葉・東京・群馬、近畿では滋賀・大阪・奈良・兵庫、四国では香川・愛媛・高知、遠方では長崎、鹿児島県屋久島の安房からの参加者であった。徳島県内では前例のない日本文化の根幹、阿波国を拓いた忌部族の主要産業となる麻にスポットを当て開催された初のイベントとなった。終了して見れば盛況なイベントになったものの、午前中までは、台風14号の接近により、進路と天候如何によっては開催が危ぶまれる状態であった。県内各地では、台風の影響を考慮してか、各イベントの中止が相次いでいた。当日は小雨程度、心配された暴風雨警報も発令されなかった。晴天であれば、ドイツ館前の広場の中央に象徴となる麻釜を置き、商品販売のためのテントを両脇に並べる予定であった。しかし、雨天のため、麻に関連する商品販売は、正面玄関から大ホールに至る狭いスペースの両側に並べるように変更した。そのことで商品陳列に厚みが増し、逆に商品が売れるという好成果をもたらしたように思える。台風情報もなく晴天であれば、後100200名の参加者が望めたであろう。

□会を締めくくるイベントは、大森氏による麻挽き体験となった。舞台上には、挽いた麻を干す竹竿が置かれ、その前で梶氏が大森氏の指導で製作した桧の麻挽台(長さ50cm、幅20cm11基が並べられた。麻挽きに用いる金具の素材はアルミ製で、梶氏がホームセンターで材料を買って加工したものである。麻挽き用の麻は、栃木県鹿沼市の大森氏の麻を皮剥ぎしたものを、冷凍庫で前日まで保存し、前夜に解凍したもの。その作業も梶氏が担当した。舞台前には、興味津々な目で麻挽き体験しようとする人々の長蛇の列ができた。また、何十人もの人々がその光景をカメラに収めようと携帯電話を舞台に向けフラッシュがたかれた。そして、泉鳴門市長、岡田県会議員、斎藤商工会会長はじめ、約100名が約50分間にわたり麻挽き体験を行った。大麻町青年部の梶達矢氏は、来年もこのようなイベントを是非とも実施するとともに、地元で学習会を立ち上げ、大麻山の麓で麻畑を実現するとの強い意思を表明し、万雷の拍手をもって、17:00、日本の麻関連のフォーラムとしては最大規模のイベントの幕が下りた。18:0021:00までは、大麻比古神社の参道聖域内にある唯一の民宿「観梅苑」で、約70名の参加者による大交流会が開かれ、互いの親交を深めた。

□その後は、林博章氏がコーディネーターを努め、大麻まちづくりシンポジウムが開催された。パネラーは、地元で町づくりで活躍する名士4名と「鳴門再発見」の著を編集した永井英彰氏の5名で構成した。その名前と発表趣旨は次のようなものである。@鳴門市ドイツ村友の会会長 林 啓介「ドイツ館と・賀川豊彦の精神から見る世界平和」、A阿波のまほろばウォーク実行委員長 田渕 豊 「悠久の可能性を秘めたふるさと、阿波のまほろば」、BNPO法人まちづくりサークル大麻 三浦 啓親「大麻山交流圏構想を目指して」、C大麻町商工会青年部 梶 達矢「麻文化の発祥地として麻産業特区を目指す」、D徳島県観光協会理事・(株)地域サービス 永井 英彰「鳴門再発見の発行から見る大麻町の役割」。シンポジウムの最後には、遅れて到着した鳴門市長・泉和彦氏から県外の参加者に対して鳴門をPRして締めくくりが行われた。

13:00からは準備も整い、ドイツ館大ホールで「大麻まちづくりフォーラム」が開催された。司会はうずしおレディーが担当し花を沿えた。開会式に先立ってのオープニングは、県内外で活躍するミュージカルスクールWITH12人のメンバーで「地球の平和を謳う」と題し、子ども達の平和へのメッセージも含め、3曲の歌と踊りが披露された。子ども達の純真な歌声と迫力ある踊りに、人々は心を惹き付けられた。そのメンバーの一人、中山サミ(高3)さんは、東京有楽町の国際フォーラムCで今秋開催されたミュージカル「赤毛のアン」で、親友ダイアナ役を務めた実力者であり、聴衆をその抜群の演技力と透き通るような歌声で魅了した。続けて開会式が行われ、大麻町商工会会長の斎藤忠恒氏からあいさつ、来賓挨拶として代理(泉理彦)が祝文を述べた。

□さらに、大麻まちづくりフォーラムの会場となった大ホール内に目を移してみる。10時からは全体の舞台設営、照明、音響、スライドなどのリハーサルと調整を行った。11時からはオープニングセレモニーとなる「ミュージカルスクールWITH」のリハーサルを行った。また、ドイツ館から大ホールまでの入口に商品展示、書籍販売所、受付を設定し、大ホールの会場後方部には、麻の文化に関係する展示スペースを設定した。まず、麻を蒸すための高さ約150cmの麻釜が置かれた。これは、大麻町商工会の梶達矢氏がイベントに合わせ、栃木県鹿沼市下永野の大森氏の近所の方から借りてきたもの。戦後すぐ作られたものであり、約50年経っている代物である。また、高さ23mの麻の繊維を剥ぐと、茎のみとなる。それはオガラと呼ばれ、栃木県では建材としても使用されていた。そのオガラを束にしたものは、デザイン的にも素晴らしいものである。その脇には大森氏の息子・芳紀氏の作品となる麻紙を用いたランプシェールが展示され人々の目を奪った。また、大森氏が提供した麻の農機具、麻の写真や麻の用途に関係するパネル写真展も行った。注目すべきは、大麻町が取り組んだ大谷焼である。矢野陶器の矢野耕市郎氏が、オガラと皮付きの麻茎を灰にして釉薬に入れ焼いた大谷焼が展示された。矢野氏によれば、麻による釉薬の色が出たという。このように、大麻町の麻をモチーフとした商品開発事業は、このイベントにより第一歩を踏み出したといえる。

10時から始まった大麻フェスティバル(物産販売)では、栃木県鹿沼市の大森家が経営する[ギャラリー納屋]の出品物はほぼ完売した。特に人気であったのは、麻を使用したお守りグッツ、長さ20pのお守り用の鈴縄、おしぼり置き、精麻の束など、今後の大麻町の製品開発に参考となった。その他、滋賀県愛荘町の近江上布博物館が出展したタオルや麻布等の販売もあった。このように、[麻]に関係するさまざまな物産展を行った。その種類は来場者が驚くほど多岐に及び、麻そば、麻コーヒー、麻ビール、麻の実油、麻の実クッキー、麻の実ナッツチョコレート、麻ゴマふりかけ、麻タオル、麻コースター、麻の樹脂で作られたうちわ、麻の化粧品、麻キャンドル等のさまざまな物産が揃えられた。その中で注目すべきは、麻ドレッシングの試食・販売であった。麻ドレッシングは、大麻町の「美味フーズ」が、ヘンプオイルを入れて開発したもの。麻キャンドルの製作体験コーナーは、藍住町商工会婦人部が担当した。なお、反省点としては、当日の来場者は麻に興味をもつ関係者が会場に足を運び、その麻の意味を知った上で商品を購入したのだが、麻の歴史や効用については、一般消費者に知られていないのが現状で、今後のイベントを成立させるには、麻についてのPRを如何に進めるかがポイントとなる。大麻町の情報の発信力が試されるだろう。